こんにちは、お宿千代里のAyaです。
前回は、佐久穂町に移住した私たち家族が、空き家バンクで立派な古民家に出会って「宿をやろう」と決めるまでのお話でした。
今回はその続き。この家が「お宿千代里」になるまでの、ドタバタの裏話です。
先に白状すると、当初の計画は「夏の終わりにオープン」でした。
実際に初めてのゲストをお迎えしたのは——大晦日です(笑)。
何がどうしてそうなったのか、順番にお話しします。

実は、2年ごしの家探しでした
「空き家バンクで見つけて即決」のように前回書きましたが、そこに至るまでに、実は2年近く物件を探していました。
古い日本家屋は素敵でも修繕が大変そうだったり、雰囲気がしっくりこなかったり、なかなか「これだ」に出会えませんでした。
だからこそ、この家を見たときの衝撃は忘れられません。
日本家屋の面構えとして、文句なしの最高。
物件を見てきたからこそ、「この家は別格だ」と確信できたのだと思います。
ダイニングの壁を塗ったら、止まらなくなった
購入したのは2025年の5月。
そこからリフォームが始まったのですが、ここで「古民家あるある」の洗礼を受けます。
一箇所きれいにすると、他の箇所が気になってくるんです。
ダイニングの壁を塗ったら、続く廊下が急に見劣りして見える。じゃあ廊下も塗り替えよう。
そうしたら今度は天井が気になって、天井の壁紙も張り替え。
台所裏の納戸を片付けてシャワールームに作り替え、お風呂の脱衣場は女性にうれしいパウダールームに仕上げ——
気づけば、手直しの範囲はどんどん広がっていきました。
「いつになったらオープンできるんだろう」
カレンダーを見ながら、何度そう思ったかわかりません。
夏の終わりに開けたかったのに、秋が来て、山が色づいて、初雪の便りが聞こえてくる。
焦りました。正直、かなり。


壁塗り隊、集合
そんな工事を支えてくれたのが、人の力でした。
壁塗りは基本、自分たちの手作業。
友達に何度も声をかけて、「壁塗り隊」としてみんなに手伝ってもらいました。
誰かと一緒に壁を塗った部屋って、不思議と愛着が違うんですよね。
今もその壁を見るたびに、あの日の顔ぶれを思い出します。
そして全体のコーディネートは、インテリアが大好きな私の母と、デザインまでできる腕利きの大工さんにお任せしました。
私は細かいことを決めるのが苦手なので、「統一感」はプロと母に委ねて、私は現場を見に行って確認する係。
ひとつだけ違うものがあると全体の空気が変わってしまうのが内装の怖さで、この分業は正解でした。
ひとつだけ、かわいい誤算も白状しておくと——2階の洋間に作った琉球畳の小上がり。
布団の上げ下ろしを考えて高さ40cmにしたのですが、これが上り下りにはちょっと高かった(笑)。
座るにはちょうどいいので、結果オーライということにしています。

保健所と消防に、通い詰めました
工事と並行して進めていたのが、手続きです。これがもう、わからないことだらけ。
宿を開くには保健所の許可が必要で、消防の設備検査も必要で、書類は基本ぜんぶ紙。
平日しか窓口が開いていないので、日程のやりくりにも苦労しました。
何度も保健所に行き、消防に行き、同じことを何度も質問して——
それでも担当者のみなさんが毎回丁寧に応えてくださったおかげで、安心して進めることができました。
移住のときに感じた「佐久穂の人の温かさ」を、役所の窓口でも感じることになるとは思いませんでした。
夏には試しに自分たちで泊まってみたのですが、この時はまだ各所の扉がついておらず(笑)。
そして、ここで大事件。
お風呂のお湯が途中で水になり、ボイラーの故障が発覚しました。
オープン前に気づけて本当によかった……! 開業前の「試し泊まり」、これから宿をやる方には心からおすすめします。
そして2025年12月11日、消防の検査に合格。この瞬間、ようやく「宿になれる」ことが決まりました。
大晦日、初めてのゲスト
12月中旬に予約サイトに掲載して、まもなく最初の予約が入りました。
日程は、12月31日から。初めてのゲストが、大晦日にやってくる。
予約の通知を見たときは、うれしくて跳びはねました。と同時に、心配なことだらけ。
準備してきたもので満足してもらえるか、ゆっくり過ごせるか、佐久穂の冬は冷えるから寒い思いをさせないか——。
せめておもてなしの気持ちが伝わるように、ダイニングに花を飾り、地元のお菓子を用意しました。
場所がわかりにくくないかも不安だったので、当日は到着時刻に合わせて外に出て、宿の前でお迎えしました。
いらしたのは、東京にお住まいのインド人のご家族4人。
ときどき軽井沢に遊びに来るけれど、年末はどこの宿もいっぱいで……と、この家を見つけてくださったのでした。
玄関から中へお迎えしたとき、その一言が出ました。
「ここは神社なの?」
立派な柱と造作を見上げながらの、その一言。
私の緊張は一気にほぐれて、「あ、この家は大丈夫だ」と思えました。
お帰りの日も見送りに伺って、不便がなかったか、どんな滞在だったかを聞きました。
「すごく素敵な滞在になった」と喜んでいただけたこと、一生忘れません。
夏の終わりのはずが大晦日になったけれど、1年の最後の日に、この家は「宿」になれました。
おわりに
振り返れば、遅れた4か月は「この家に恥をかかせない準備」の時間だったのだと思います。
手直しは、実は今もちょこちょこ続いています。
古民家との暮らしは、たぶん一生そういうものなのでしょう。
次回は少し目線を変えて、大人数の旅行の幹事さんに向けた「宿選びで本当に見るべきポイント」の話を書きます。それでは、また。
お宿千代里 ホスト Aya